「やりがいのある仕事を見つけよう」と言うけれど、やりがいとは何だろうか。
あるいは「情熱の持てる仕事を探そう」ともよく言われる。
え? それってどこかに落ちてるのを探すの?
私は学生の頃、自分のやりたい仕事なんてありませんでした。自分が何がしたいのか全くわからなかった。だから就職活動などする術もなく、友人に誘われた会社の就職試験を受け、運良く内定をもらい、そのまま入社しました。
就職という大海原を前にして、自分のやりたいことが決まっている人なんて少数派。大部分の人が、自分が何がしたいのかわからないままに就職活動を迫られるのです。就職活動というのは人生における一世一代の大イベントと見なされることが多いけれど、何がしたいのかわからないままにその一世一代の大イベントに参加させられるのだから不運という他ありません。
「就活で成功しなければ人生終わりだ」。んなわけない。私なんて2回も転職している。
運良く就職できたからといって、「やりがい」「適職」「情熱」に関する悩みは尽きることはありません。「仕事がつまらない」「こんな仕事やりたくない」「やる気が全く出ない」「この仕事、自分には向いていないのではないか」など。
なぜ私たちはこんなにも悩まなくてはならないのだろうか。本稿における問題提起は、就職界隈で溢れる、「自分にとってのやりがいを探そう」「自分の情熱を見つけよう」という文句、そもそもそれが間違っているのではないだろうか、ということです。
「やりがい」を探さなければならないわけではない
僕たちを悩ませるやりがい志向
「やりがいを探そう」「情熱を見つけよう」という考え方は、一見ポジティブで人生を輝かせるように思えますが、実は私たちの悩みを増やすだけの代物です。なぜなら、「やりがい」や「情熱」を見つけられなかった場合、より一層迷ってしまい、見つけられない自分を責めてしまうことになりかねないからです。
逆に、あまりに多くの情熱の対象を見つけてしまった場合、一つに絞ることが困難になることも考えられます。それでまた苦悩することになる。
本来、やりがいや情熱なんてなくても構わない、ただ生きていけばいいだけのはずだったのに、いつの間にか私たちは「やりがい探し」や「情熱探し」をさせられ、余計な悩みを抱える羽目になってしまったのでした。
根本的な考え方を変えてみる
「やりがいを探そう」「情熱を見つけよう」というのは、単なる考え方の問題であって、必ずしもそうしなければならないわけではありません。軽薄な自己啓発本あたりにステレオタイプに記述されている言葉に過ぎない。なんとなく綺羅びやかで、なんとなくそれっぽい言葉に過ぎない。本質を表した言葉では決してないのです。
だから私たちは、「やりがいを探そう」なんて、そんな軽々しい言葉を信じる必要なんてありません。モットーにするなんて馬鹿げている。そのような、一見ポジティブっぽい考え方に振り回される必要なんてないのです。
従って、悩める私たちがまずすべきことは「やりがいとやらを探さなければならないわけではない」「情熱の持てるものを躍起になって見つけなければならないことはない」という、スタート地点から考え直してみること。そこから全てが始まる。
見つけるものではなくて、自分で作り出すもの
とは言え、やりがいや情熱がこの世に存在しないわけではありません。重要なことは、それは「見つけるものではなくて、自分で作り出すもの」である、ということです。やりがいは見つけるものではなく、作り出すもの。大事なことなので二回言いました。上の標題を含めれば三回。
やりがいや情熱は、その辺に落ちているものではない。あなたに発見されるのを今か今かと待っているものでもないし、神秘的なものでもない。魔法でもない。
「やりがい」「情熱」という考え方を捨ててみよう
人生は宝探しじゃないぞ
もしも、やりがいのある仕事というものがどこかに存在し、あなたがそれを見つけなければならないのだとしたら、不運なことこの上ありません。あなたの人生は「やりがいのある仕事探し」に終始し、あれじゃないこれでもないと転職活動に躍起になり、結局見つけられないままに幕を閉じてしまうかもしれないからです。
だけど、「やりがいのある仕事は自ら作り出すもの」であると考えた場合、どうでしょう。もちろん転職が必要になる場合もあるかもしれませんが、やりがいという名の宝探しに躍起になって時間を無駄にし、本質を見失うことは少なくなるはずです。今の仕事を違ったアプローチでやってみるとか考え方を変えてみるとか、情熱を作り出すための様々なやり方が考えられます。
順序が逆だと見抜こう
あるいは、根本的に、仕事にやりがいや情熱を持ち込むことにどれだけの価値があるだろうかという疑問さえ出てくることに気付きます。
やりがいや情熱に洗脳されてしまっている私たちは、情熱的に取り組める仕事を探している。求人誌やリクルートサイトを見れば、「みんな笑顔でやりがいのある仕事です」「命をかけられるくらいの仕事です」とアピールしてくる企業の多いこと。だから私たちもついつい「自分が何がしたいのか」をそっちのけで「やりがいのある仕事はどれだろうか」と探してしまう。
順序が逆なのです。「やりがい」が先にあるのではなくて「何がしたいのか、あなたが何に興味があるのか」が先なのです。もちろん、私が学生だった頃は、別にやりたいことなんてなかったと先に述べました。だから就職活動なんて真面目にやらなかった。たまたま就職できた私が言うのも何だけれど、それはそれで構わないことであると思います。
やりがいは後から必ず付いてくるもの
「やりがい」は大騒ぎするほどのものではない
就職活動なんて適当にやればいいと思います。だって、やりたいことなんてまだわからないからです。だったら、悩んで足踏みしてしまうよりも、適当にやればいいのです。やりがいや情熱なんて後から付いてくる。少なくとも「やりがいのある仕事に就かなければならない」なんて考えは、本末転倒。捨ててしまおう。ポイ。
やってみたら意外とおもしろかった、ということが人生には山ほどあります。友だちに誘われて何となく入った部活だったけれど、その友だちは早々に辞めてしまったが自分はとても気に入って楽しくやり遂げることができた、という話は意外と多いものです。やりがいや情熱が先にあるのではありません。やってみた後に、やりがいや情熱が付いてくるのです。何事もしっかりと取り組めば、単なる興味が「やりがい」に変わるのです。
繰り返しになりますが「やりがい」が先にあるのではなく、それは後から付いてくるものなのです。
つまり、やりがいなんて、そんなに大袈裟なものではないのです。「やりがいを探そう」「情熱を見つけよう」と就職・転職界隈では耳が痛いくらいに喧伝されていますが、やりがいなんてそんなに仰々しいものではない。そんなに大騒ぎししてこだわらなくてもいいものなのです。
興味があるかどうかで判断しよう
もしあなたが、「やりがいのある仕事が見つからない」と身動きが取れなくなっているのなら、最も良い解決策は「やりがい」のことは忘れることです。就職活動中の学生であれば、少しでも興味のある仕事を選ぶこと。たったそれだけ。難しく考える必要なんてありません。あとはそれを死なない程度にそれなりに頑張ってやること。そうすれば、情熱は後から付いてくる。
社会人で「今の仕事にやりがいがない」と嘆くのなら、まずはその仕事に興味があるかどうかを自分に問うてみることです。少しでも興味があるなら、仕事に対するアプローチを変えてみることができないかを考えてみましょう。今の仕事に全く興味が無い、あるいは、仕事自体に興味はあるけど職場環境が問題である場合、そこで初めて転職が有効な手段となり得ます。
興味が持てない・職場環境がストレスになっている場合、今の仕事を見つめ直すことも必要
実際に今の仕事を辞めて転職に踏み切る・踏み切らないは置いておいて、転職という手段を頭の中に入れておくことで、「別に今の仕事をしがみつかなければならないわけじゃないんだ」「いつ辞めてやってもいいんだ」と思えて、少し気が楽になります。
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転職に適期は確かに存在します。ボーナスを貰った後とか、転職市場が活性化する春や秋など。ですが、転職の準備を始めるのに適期はありません。思い立った今が適期であり、あとはやるかやらないかだけの問題です。つまりは、今、少しでも「今の仕事に関心がない」「頑張ってきたけれど、やりがいが持てそうにない」と思うなら、まさに今がその時。あとは実際に一歩だけでも動いてみることです。
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